檻を対に交わす夢物語。
少女は黒い本を読み、少年は格子を掴んで目を輝かす。
「“楽園”がどんなところか、知ってる?」
少女の問いに少年は首を横に振った。
「楽園ではね、皆幸せで、花がたくさん咲いていて、空が綺麗なんだよ」
「この空も綺麗だよ?」
少年の言葉に、少女はクスリと笑った。「それは高い高い天井に描いた物だよ」
「本物の空にある雲はね、ずっと動いているんだよ」
「えっ」
少女の言葉に、少年は驚きの声を上げた。「それ本当?」
「本当だよ」
少女は読みかけの本を静かに閉じ、少年に顔を近付ける。
「君に何時か、楽園を見せてあげる」
少女は少年の輝く目に白く、細い指を差し込んだ。
湿った音と、苦しげな悲鳴。
「何時か君が大きくなって、またボクに出会うまで」
「コレは預からせてもらうよ」
檻を対に交わす夢物語。
“楽園”へと抱く幻想。背徳を紡ぎ続ける物語。
父を廻り争う母娘。嘘しか吐けない兄妹。親友を喰らう友。淫乱な娘。
己を偽る少女。手を伸ばしても圧し折られる男。娘を愛した母。
“楽園では皆幸せなんだよ”
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